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봉선화(鳳仙花)

 作詞:金亨俊 / 作曲:洪蘭坡

≪市販DVDバージョン≫

舞台左側のモニター画面では、前曲終了時に、打ち上げ花火とともに、こっそりと、舞台下に下りた羅勲児の、着替え場面が映し出される。
こっそりと消えた意味がなくなると思うのだけど、特有の茶目っ気の発揮だろうか、ユーモラスな演出だ。

「光復60周年記念コンサート」でなければ、採用されなかったであろう、本曲「봉선화」、ここから10分近くを要しての、舞台上のパフォーマンスはまさに圧巻だ。
それも山あり谷ありと、起伏にあふれたもので、次々と、知らず知らずに引き込まれていく。

3場面に分かれている。

(その1)
伝統弦楽器によって、本曲のメロディが奏でられる直前までの部分。
オーケストラの一部と、伝統打楽器が中心となった演奏で、伝統舞踊ダンサー達 が主役だ。
伎楽面姿の舞踊が不気味かつ不思議な印象を与える。
この舞踊だが、何らかの意味合いを表現しているのだろうか。最後に、全員が舞台上にうつ伏せになっている。

(その2)
伝統弦楽器による本曲の冒頭のメロディの演奏が始まる。
それが合図のように、舞台上に、ピエロが現れて、パントマイムを演じ始める。
さらに、上段の舞台では、曲芸サーカスの面々も現れて、それぞれの演技を始めていく。
舞台の大画面では、曲芸の大写しが映し出され、曲芸が大写しになるたびに、拍手が起こる。
主役はなんと言っても、舞台最上段中央の、円形台上を、ローラースケートで回転しながら、曲芸を披露する4人娘だろう。エンディングまで、存在感たっぷりに、文字通りの曲芸を演じている。
東春(トンチュン)曲芸芸術団からの面々だ。

(その3)
生ギターのイントロのソロに始まり、羅勲児の歌が入り、そしてエンディングまでの部分。
スローなボサノバ調での演奏は、この曲に対する新解釈にも取れる。
反戦歌の意味合い上、重く厳粛に演奏されることが当たり前になっていた本曲だが、深刻さはまったく感じられない。
最初の羅勲児の歌い出しの場面、軽い微笑みが観られるが、「どうだ、このアレンジは」と、問いかけているようにも見える。
ここでも、男女ダンサー達は、意図的に何らかのストーリーを、演じているように見えてならない。
曲の詞の内容を、順次、表現しているのかも知れない。

(詞について)
反戦歌として有名なこの曲だが、詞に一箇所だけ、反戦の意味合いでは、と、解釈できる単語を使用している部分がある。
日本語訳での「少しずつ蝕まれ」のところだ。
「침노하니」が韓国語の部分だが、原型は「침노하다」で、意味として、「少しずつ蝕んでいく」のほかに、「他国に不法に侵入する」がある。

(曲そのものについて)
韓国では、クラシック界でも、ソプラノ歌手が好んで、採用して歌っているようだ。
しかも、フルオーケストラの演奏つきでだ。
メロディのよさもさることながら、歌手としての、聴かせどころがあるからだ。
さびに、高音部分がある程度続き、もうこれで、下がるだろうと思わせるところで、もう一段階、高音になっていく。ここが他の曲にない部分で、なんとも不思議で、印象深い旋律になっている。
その部分は、DVD版でも、TV版でも、スローモーション画面に編集されている。

(参考直訳)
・・・・・
垣根に立つ 鳳仙花よ あなたの姿が 哀れで もの悲しい
長く続いた 夏の日 美しく 花が開く頃
可愛い娘達は あなたを愛でて 戯れたものだ

いつのまにか 夏は過ぎ去り 秋風が そよそよと吹き出し
きれいな花房は よく耐えるものの 少しずつ蝕まれ 花が落ちた
年老いた あなたの姿が 哀れで もの悲しい

北風が吹く 年始め 寒い風のもと
あなたの姿は 消えてなくなったけど
安らかな夢をいだく あなたの魂は ここにあるゆえ
のどかな春風のもと 蘇えることを 請い願うなり
・・・・・
(2016年4月18日:美辞麗句)

≪テレビバージョン≫
よく練られた演出・構成の元での、異次元に迷い込んだかのような不思議な感覚におちいる演目。

幽玄な雰囲気の導入部の中、左右2ヶ所からふたつの移動舞台がゆっくりと上昇。
右側には民俗打楽器、左側には民俗弦楽器演奏者達。同時に、民族衣装のダンサー達が様々な舞楽面姿で舞台袖から登場。
勇ましい掛け声と民俗楽器の音色に合わせて舞う。

奈良国立博物館の仏教館で展示されている舞楽面を連想させる。

おもむろに「봉선화」の一節が不思議な音色の弦楽器より奏でられる。
それに合わせて、舞台最上段では計8名のサーカスの演技が始まる。
右側に、3本のボーリングのピンの操り人、真ん中には、ローラースケートを履いた少女4人と円形のサーカス台が、
左には、特大の花瓶を頭で操る人、そして、もう一段下の舞台には男女ペアの曲芸。
下を見れば、音楽監督直々で、生ギターのアドリブによるイントロが。
(このキム・ギピョ氏の生ギター演奏は本当に素晴らしい。最大限の効果を常にもたらしている。このコンサートでは「고향으로 가는 배 」でも活躍している)
このとき、左側の上昇移動舞台から、羅勲児がこれまた民俗衣装姿で登場し、本格的に曲が始まる。
同時に舞台中央では舞踊家達が、独自のストーリーを語るかのように舞い踊る。
サーカスに眼を向けると、少女4人の演技が最高潮。
円形のサーカス台の上を2人から4人でぐるぐる回りながら技を披露。
2人の少女が首と首ををベルトで結んで回転するシーンでは、首が抜けないか本気で心配になる。会場からも感嘆の声と拍手が。
楽団のバイオリニストの1人も見上げて驚きと感心顔。

同時に3つの異なったパフォーマンスが展開されている。
1.曲そのものの歌唱と演奏
2.サーカスの演技
3.舞踏家たちによる寸劇。このアイディアも羅勲児だろうか。

歌と踊りとサーカス演技に感心しているうちに気がつけばエンディングの場面。
羅勲児がサーカスの面々にさりげなく敬意を表しているのが見て取れる。

全編にわたる生ギターの活躍も特筆もの。羅勲児の高音の歌い方も見事。
参りましたよ。

(2015年9月26日:美辞麗句)
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