≪市販DVDバージョン≫
「動」の前曲から、一転、「静」の今曲、2曲目の「고향노래」である。
大画面では、頼りなさげに揺れる一艘の小舟が、海鳥の声に押されるかのように流れていく。
暗転した舞台では左右からスモークが流れ出てきて、幻想的な雰囲気に。
演奏の主役は生ギター、イントロからエンディングまで、曲想にマッチした、またはそれ以上の効果のある伴奏で、羅勲児、バックボーカル陣をサポートしている。
メインの羅勲児の歌唱に絡みながら展開するバックコーラスの輪唱も見事。編曲(アレンジ)の勝利。
ひとつの曲を作るには、通常、詩と曲(メロディ)が要る。その詩とメロディにどんな装飾を施すのかが編曲。
この編曲の良し悪しによって、曲の仕上がりに雲泥の差がでる。
(このライブから11年前の1994年の羅勲児コンサートでオープニングに演奏されたこの曲をビデオで観たが、好き嫌いはあるにせよ、印象がまったく違う。別曲のようだ。)
詩に寄り添うように、一字一句丁寧に情感をこめて歌い進める羅勲児。
場内は静寂、聴き入る観衆。
エンディングでは、照明をフェイドアウトする歌声に合わせて徐々に暗くする演出も。余韻を残す手法だ。
このライブでは、全編にわたり、細部にいたるまで、きめ細やかな演出がみられる。
前曲からこの曲、次曲の「모르고」までの3曲はワンセットで間髪を容れずに演奏されるが、最初の段階で、観客をコンサートに完全に惹きこませようとする意図がありありとみられる。
そしてその意図はこれ以上はないくらいに実現している。
歌詞に目を向けると、「あなた」 が育った懐かしい故郷の自然の描写で、その山々の風景が、あたかも実際に眼前に展開されるように推移する。
大画面の小舟と合わせて想像を膨らませやすい。
このコンサートにおける、完全にノックアウトさせられた曲、その1である。
(参考直訳)
・・・・・
故郷に向かう舟 夢をのせた小さな舟
情愛を失くしたあなたよ 故郷に行きましょう
山々に囲まれた 小群落の台地は 南方の村に伸び
朝の陽ざしはやさしく 一草葉ごとにふりそそぐ
故郷に向かう舟 夢をのせた小さな舟
情愛を失くしたあなたよ 故郷に行きましょう
山鳩は皆つがいで 片方を追って南方の村へ
笛吹き牧童が奏でる いにしえの歌の懐かしさ
故郷に向かう舟 夢をのせた小さな舟
情愛を失くしたあなたよ 故郷に行きましょう
・・・・・
(2015年10月10日:美辞麗句)
≪テレビバージョン≫
大画面に海に浮かぶ小船が、効果音と共に映し出され郷愁を誘う。
生ギターの伴奏が曲想にマッチして非常に効果的。生ギターは全編で存在感。
羅勲児の感情たっぷりの歌が感動を呼ぶ。
バックコーラスの使い方が上手。
「고향역」までバックボーカル陣は出ずっぱりだが、歌の厚みでも演出面でも絶大な効果をあげている。
彼らの立ち位置も舞台の中央、左右、後方、最前列と曲と共に移動しており、羅勲児をよく盛り上げている。
この曲の終了時点で、このライブコンサートは成功間違いなし、とスタッフは確信したに違いない。
(2015年9月26日:美辞麗句)