羅 勲 児
VS
金 重 培
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私が選んで作る私VS私を削って作る私
二人はどんな人?
 
第18章(最終章)  227頁7行目から228頁16行目まで  
 ここで最後に、羅勲児の物まね歌手‘ナ・ウンハ’(おおきに注:ハングル表記は나운하で二文字も違うが、‘羅勲児’と‘ナ・ウンハ’は話し言葉ではどちらも「なうな」に近い発音に成り、ほとんど区別が付かない)の特異な人生を振り返りながら話を締めくくろう。
‘ナ・ウンハ’は国内で活動する羅勲児の物まね歌手達の中で最頂上級だ。
過去28年間「羅勲児役業」をしてみたからか、自分が本当の羅勲児であると思う「錯覚病」まで生じたと告白した。
彼は羅勲児の国内外公演を録画したビデオテープ数十本を数百回も見て単純な物まねだけでなく羅勲児の動作と話しぶり、癖まで徹底して研究するという。
物まね歌手‘ナ・ウンハ’の若い頃の写真と今の外見を比較してみた歌謡評論家達は“どれほど刻苦の努力をしたのか、実際外貌まで羅勲児に似て行く‘進化’に成功した”と感嘆したほどだ。
 このような場合、物まね歌手‘ナ・ウンハ’の自己設定目標は‘ノ・フンア’(おおきに注:ハングル表記は너훈아で羅勲児と一文字しか違わない。発音は「ノフナ」あるいは「ノウナ」となり、羅勲児と似ていて紛らわしい。)等、他の物まね歌手達との競争で“本物の羅勲児と最も似ているイミテイション歌手”になる事だろう。
彼の目標を成し遂げる為に‘ナ・ウンハ’が出来る自分決定権は数え切れないほど多い。
下唇を噛んで、頭にパーマをかけ、特有の慶尚道訛りをまね、飛び出た顎を手術して、毎日のように録音室で歌を練習して・・・
しかし、どんなに努力しても物まね歌手‘ナ・ウンハ’が本物羅勲児を凌ぐ事は無い。
 ざっと多様に見える彼の自己決定権は全て「物まね歌手‘ナ・ウンハ’」の限界を超えられない。‘1万ウォン限度内で水使うように使う’わけだ。
 生き残りの為の選択の一つの手段として考える事までも羅勲児と似ていかなければならないという圧迫感の中で生きるしかない‘人間パク・スーンチャン(物まね歌手‘ナ・ウンハ’の本名)の人生に対する根源的な省察をしなければ物まね歌手‘ナ・ウンハ’の自己決定権は表皮的であるしかない。
そうであれば本物プロフェッショナルを自任するスーパースター羅勲児の‘自己決定権’はどのような種類なのか?
 誰かの言葉のように‘もはや、文化の辺境に追い出された、感情が存在するかどうかさえ疑われる中高年達の鉛のように重い足取りをこうして容易に引っ張り出す羅勲児の存在”がとても尊く有りがたく、老婆心で投げかけてみる質問だ。おわり。
(日本語訳:byおおきに2010.5.25)
(おおきに注:‘1万ウォン限度内で水使うように使う'とは “度を越さない程度内なら自由にできる”というような意味。2010.6.20追記)

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