夕焼け時だろうか、舞台周辺の大型スクリーンに鮮やかな赤茶けた田園風景が映される。
観客側の背景画面には、柿の木や草木が風で揺れている姿が見える。
舞台上では、女性アシスタントが羅勲児にマフラーを渡し終えて、舞台横に歩き去る姿が映る。
すると、楽団の弦楽器陣による曲のイントロが聴こえてくる。
舞台左側には柿の木のセットがあり、その側には、ハーモニカ奏者の「하림」(ハリム)氏が、そして、舞台右側には男女バックボーカル陣もスタンバイしていて、イントロ演奏に加わる。
「명자!」に続いてのハーモニカ伴奏だが、哀愁や郷愁(ノスタルジア)を彷彿させる曲想によく馴染んでいる。
「アリス」公演でも思ったが、この曲には、なくてはならない楽器だ。
羅勲児の持ち歌で、「母」を歌った曲で真っ先に浮かぶのは、「어매」だろう。
チャルメラ奏者のイントロで始まり、女性踊り手が必ず加わり、羅勲児とのからみもあり、羅勲児の公演で繰り返し登場したものだ。
ただ、曲に関して言えば、曲調は重く、詞はかなり難解で、少しとっつきにくい印象もあったのも事実だと思う。
当曲、「홍시」は、「어매」とは好対照だ。
曲調は、軽いボサノバ、サンバ風で、リズムに合わせて、自然と、心地良く、からだが動き出しそうな雰囲気がある。
詞も具体的だ。田舎で暮らしているであろう母の姿や、作詞者の母への想いやりが、心配ごとの数々を通して、生き生きと伝わってくる。
曲の題名もユニーク(斬新)だ。
母を、熟した柿と例えた詞は、今までにはないのではないか。「思い出す、柿が熟れる頃になると、母を思い出す」、という詞で始まり、展開していく内容は、ほんのりと、温かい、何ともいえない気持ちにさせる。
さて、当曲が終わると、羅勲児の、視聴者に向けての、最初の挨拶(内容は以下)が始まり、そして、第一部、「고향」が幕を閉じることになる。
「私は、今日のような公演を、生まれて初めて、行っています。
私達は、今、特異な状況に面して、暮らしています。
公演を行いながら、ちょっと見つめ合い、さらには、お久しぶりです、と言いながら、握手をする。
これ、何を、ちょっと注意すべきなのか、何をやったりとか、やらなかったりとか。
目の輝きも、あまり見せず、(有難うございます)、
(천지빼까리):慶尚道の方言で、多過ぎて、その数を計り知れない、の意。
今日、一晩中、もう一度、行うことが出来ます。(有難うございます)、
皆さん、本当に、我々には、英雄が存在します。
コロナ禍で、このように、混乱の波が押し寄せるとき、私達の、医師、看護師の皆さん、他の関係者の方々、医療チームの皆さんが、我々の英雄です。
これらの方々の存在無くしては、私達は、この波をどうやって乗り越えられたでしょうか。
(젖무근힘):乳を飲んでいた力、大変骨が折れる、の意。
私達、医療チームの皆さんに、大きな拍手と、「大韓民国」を、叫んでください。」
(2020.12.16 美辞麗句)